ふたりの少女たちは、走る喜びを知っている。2015年11月06日 19時20分00秒

一年前、ひとりの少女が店にやってきた。
中学3年生。
ケガや故障で走れない日々がつづいていた。
「もう陸上競技なんてやめよう」
とさえ思いつめていた。
お父さんもお母さんも心を痛めておられた。
せめて、中学生活の最後ぐらいは、
娘に思い切り走らせてあげたいと思っておられた。
そして、ご両親の思いは届く。
この日を境に、少女は走れるようになっていく。
そのときの話

この少女の「走る喜び」は、
ある「もうひとりの少女」へと伝染する。
そして、思いもよらない物語を生み出すことになる。

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少女の「走る喜び」がすぐに伝染したのは、
同じチームの同級生のエースだった。
エースの「もうひとりの少女」も故障がちで、
足の痛みをこらえ不安を抱きながら走っていた。

エースである彼女が店にやってきたのは昨年12月。
全日本中学校駅伝大会を1週間後にひかえていた。
2足のランニングシューズをフィッティングした。
そのときの話

1週間後。舞台は山口県セミナーパーク。
彼女は駅伝の周回コースを疾走していた。
女子の部、アンカーの第5区は3kmを走る。
彼女は18位で襷を受けたが、15位でゴールした。
3kmで3人抜いた10分32秒の記録は
区間でなんと5位の成績だった。
この時の光景を、後に彼女はこんな風に語る。

「前を走っていた人たちが、
 登り坂でどんどん下がってきたんです」

もちろんこれは「彼女が見た」光景だ。
追い抜かれた3人の選手たちと、
沿道で応援していた人たちとが見た本当の光景は、
「後ろから走ってきた彼女が、
 登り坂でどんどん上がってきた」。

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今春「もうひとりの少女」は高校生になった。
新天地でも彼女の快進撃は止まらない。
専門種目の自己ベスト記録は、
入学から半年でうなぎ登りに伸びていった。
以下、中3の時と現在の記録の比較。
1500m: 4分52秒(中3)→ 4分36秒(高1)
3000m:10分05秒(中3)→ 9分43秒(高1)

圧巻は8月のN県ユース大会だった。
女子1500m2位
そして優勝した女子3000mで叩きだしたタイムは、
なんと20年ぶり大会記録を塗り替えてしまった。

快進撃はまだつづく。

彼女が所属するT高校の女子駅伝チームは、
これまで全国大会へ駒をすすめた歴史がない。
N県の女子駅伝は、IE高校が圧倒的な力を誇り、
ここ12年間連続して全国大会進出を果たしていた。

去る10月25日、N県の駅伝予選会。
彼女は「エース区間」の一区を激走した。
IE高校の一区は県で実力No.1の高3ランナーだった。
高1の彼女は先頭を走る高3ランナーに食らいついて、
わずか3秒差の2位でチームに襷をつないだ。
彼女の走りをきっかけにチームは燃えた。
ついに逆転し優勝
IE高校の13連覇を阻止した彼女のT高校は、
全国高校駅伝大会「初出場」の切符を手に入れた。

高校に入学してからわずか半年の間に、
彼女はN県の歴史を2つも変えてしまった。

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今、ふたりの少女はN県で別々の高校に通っている。

「陸上競技をやめよう」と思っていた少女
AYAちゃんは今も陸上部で走りつづけている。
今年春のご来店記事)(今年秋のご来店記事

AYAちゃんは、試合の陸上競技場でよく
「もうひとりの少女」YURIちゃんに出会う。
YURIちゃんはAYAちゃんの顔を見つけると、
いつも走り寄ってきてこんな風に言うらしい。

「AYAちゃん、ありがとう。
 中3の時にAYAちゃんから
 あのお店を教えてもらってなかったら、
 私は今こんな記録で走れてないと思う」

そして、ふたりの少女たちは顔を合わせて笑う。
うれしくて楽しくて仕方がない。
なぜなら彼女たちは知っているから。
お互いが尊敬し信頼し合っていることを。
「走る喜び」と「挑戦する喜び」が
ふたりの笑顔からあふれ出していることを。


(つづきます)





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